何故ファーストカスタムが破産したのか?
これについてファーストカスタムだけでなくキャンピングカー業界の特性も含めて考えてみた。
明日はわが身かもしれない...私はわが身です(^^;)
今後キャンピングカーを購入する方、キャンピングカーオーナーの方にも参考になればと思います。
( ※ 過去書いた日記を抜粋してまとめた日記です。懸念が現実に... )
◆ キャンピングカー業界の特殊性 ・特に中型車から大型車を扱うビルダーは、製造に必要な部材(ベース車含む車
載機器)、工場施設、宣伝広告費、その他一般的な経費を加えれば膨大なコス
トがかかる。
・車載機器の多くは欧米から輸入するために円相場に左右されやすく、少ロット
の仕入れになるビルダーはその影響を受けやすい。
・国内製造のベース車両もマイナーチェンジによる車両と価格変更がある。
・営業力と価格にもよるが年間通して売れ続けるキャンピングカーではないため
に在庫を持つのはリスクになる。したがって受注生産で先払いとも言える支払
いは、製造に纏わる資金の一つでもあると考える。
※製造するための部材価格変動はコントロールできないので、自社の経費などコ
ントロールできるものが限られるリスクの高い経営と考える。
◆ ファーストカスタムの特殊性 拘りを持つビルダーなので開発費や自社製の部材にコストがかかっている。
キャンピングカーは移動ではなく停まってから価値がある。このように言われる
ことが多いが、モーターホームを目指したファーストカスタムは移動における快
適性も追求した結果、グランドロイヤルから採用した独自のものがある。
・スペースフレーム
2000年に発表されたグランドロイヤルから引き継がれるスペースフレームは万
一の時の安全性を追及した構造である。
ベース車両に剛性フレームを組み上げるので、追突、横転などの事故から乗員
を守る造りなのです。
どれほど強いかと言えば、以前に140km走行中に風でハンドル操作を誤って横
転したglandvilla(ロイヤルと同じ構造)を見せてもらったことがあるが、FRP
の一部にヒビが入り、良く見なければ分からないような窓枠の歪がある程度
でした。
よほど転びっぷりが良かったのか?スペースフレームの効果なのかは分かりま
せん。何故140kmだしたの?140kmでも走れるの?

※ 寒さでスペースフレームの骨格が...
・オリジナル強化型リヤサスペンション
これも有名な話だが、走行性を追求するために足回りに拘り、電車のサスペンシ
ョンをヒントに独自のサスペンションを開発した。
これもロイヤルから採用された独自の足回りの強化で、高速安定性や停車時の車
内移動で起こるフニャフニャした沈みが無いのはサスペンションの効果である。
・ベース車両がHIACE
HIACEを使っているためにマイナーチェンジによる車両と価格変更がトラックよ
り頻繁にある。
価格は比較的対応し易いと思うが、トータルバランスを考えてデザイン変更をす
ると更にコストがかかる。2013年末にマイナーチェンジされたHAICEはグリル
まで架装?したBoleroになっています。
・一体型FRPシェル
グランドロイヤル開発で徹底的に風洞実験を繰り返し、何度も造り直した結果
のFRPシェルは美しく高速安定性のある優れたボディーです。
Boleroはずんぐりむっくり感がありますが私が行った
美ヶ原の自然実験?でも
空力性能が良いことが分かりました。
・前後の軸下加重はBMWと同じ4:6のバランス
走行安定性の追及は軸下加重にも拘りグランドロイヤルは軸下加重がBMWと
同じ4:6のバランスです。Boleroは知りません。
・左右の重量バランスも絶妙
清水タンクが空の時は微妙に右に傾いているが清水タンクに水を入れる
(約65kg)と左右平行になる。
・断熱材
これは当たり前であるがいい加減なものは使わず、住宅用の断熱材がFRPシェ
ルと内壁の間にビッシリ詰まっていました。L字型ソファーシートの天板を外し
て覗いて確認しました(^^;)
この効果は絶大、冬場の前泊ワカサギ釣りでも夜はFFヒーターいらずで眠ること
ができます。
※拘りの開発と独自の部材は一般的なビルダーよりもコストがかかり、外部要因
による影響を受けやすいのがファーストカスタムの特徴である。
◆ 外部環境とキャンピングカーニーズの変化 経営数字ではなくユーザー視点で多角的に見たことや思ったことを紹介します。
・2007年7月
HIACEのマイナーチェンジでベース車両価格が上がる。
同時にGLワイドをベースにする
・2007~2008年
キャンピングカー業界が沸きあがるほど売れ続け増収益になり事業拡大するビ
ルダーが続出。これをキャンピングカー大ブレイクの前兆として拡大したビル
ダーは多いが間違いだ。
国内で大きな問題となった2007年問題。団塊の世代が会社を卒業するために
企業力を維持することに専念していた。その卒業生は年齢的にも今とは比較に
ならないほど高額な退職金を手にしBigマネーが市場に流出した結果だ。
私は瞬間的な特需としか思っていなかった。次ぎの特需は再雇用された団塊の
世代が第二の卒業をむかえる2013年だが、リーマンショックによる冷え込みが
どのように影響するか予測はできない。
>> Boleroがビルダーが選ぶBest1賞を受賞 2008年はBoleroに勝るキャンピングカーは無く、他車と比較にならないほ
ど群を抜いたのは事実で私が購入を決めた時でした。
>> ファーストカスタム横浜店がオープン 
Best1を受賞
・2009年
拡大戦略の結果 2009年は前後数年類のない多くの車両が発表された。
しかし、同年に老舗ビルダー2社が破産した。うち1社は法令違反もあったが私
は単に資金が無かったと考えている。
特需が去り、リーマンショックの影響が私のような庶民に浸透し支出がコント
ロールされ始めた。
偉い人はデフレと言うが単にお金の使い方をきちんとし始めただけで金銭に
対しての価値観が大きく変化した。
>> ファーストカスタム大阪・札幌店をオープンし、CGシリーズを充実 ※ 鉄が世界規模で高騰し製鉄の価格が上がったことで製造業が大きな影響を受
ける
◎ 5m未満のキャブコンとバンコンが大ブレイク、軽キャンパーが人気の兆し
・2010年
景気の冷え込みが横ばいで価格重視のキャンピングカー選びが浸透し、売れ行
きが悪化しているのか?キャンピングカーショーも新鮮みがなくなったので私
は以降足を運ばなくなりました。
5m未満のキャブコン、バンコン、軽キャンパーが安定期に入り、HIACEのマイ
ナーチェンジで更にベース車両価格が上がる。
>> ファーストカスタムは乗りだし\1000万のVMAXを発表。 隣の建屋でやっていたモーターボート展示会のクルーザーと比べると
VMAXが高かった
・2011年
経済は上向きかけているが私のような庶民は厳しい節約生活が続いている。
>> ファーストカスタムは過去造っていたプラッツを超える大型のバスコンを
発表 
ファースト最大級のバスコンが登場
・2012年
>> ファーストカスタムは、札幌・横浜・大阪の販売店を順次閉めていく
>> キャンピングカー雑誌からファーストカスタムの広告ページが消える ・2013年
国内は企業努力で厳しいながらも2012年から序々に上向き始めるが、私たち庶
民の生活は変わることなく厳しい状態でキャンピングカーも軽キャンパーが主
流となる。この年、私はファーストカスタムの窓の変更に興味を持った。

拘りを持ち独自路線で進んでいたファーストカスタムは、従来からアクリル二
重窓を使ったいたがコストの安い一般的な窓に変更したことである。
この変更はFRPシェルの変更か手作業で削るコストがかかる。
なによりもトータルデザインや快適性を重視するファーストカスタムがブレ始
めたのか?と思った瞬間です。外見が変わり断熱性が変わった。
目で見て分かるコスト削減は窓だが他の部位でもコストダウンがあるかどうか
は分からない。
>> ファーストカスタムのHPが寂しくなるほどキャンピングカーが減って
いる ・2014
アベノミクス硬化!で円安が継続して大企業は増収益。
大企業が儲かれば法人税をガッポリ取る政策は否定しないが、企業が利益を留保
して私のような庶民に還元されない構図は始めから分かっていた。その通りにな
り支出に対する見かたは変わらず購買意欲がわかない構図も変わらない。
また、アベノミクス降下で中小企業は大きな影響を受けている。
ビルダーにとって輸入コストが上がれば利益を削るか価格を上げる方法しかな
く、利益を削れば経営が厳しくなり価格を上がれば売れ行きに影響する。
更に厳しいと思われるビルダーもあると思います。2008年頃から始まった大陸で
製造して日本に輸入することでコストバランスを保っていたビルダーは、輸入コ
ストで影響を受ける経営が始まっていると思います。
※ 消費税率が8%になり購入の壁になる。 ・2014.10
>> 毎年着ていたキャンプ大会の案内が初めて来なかった。
>> 10月中旬、ファースト本店が変わったのか来店についての案内がHPに
出た。
来店時は横手工場の電話番号をナビにセットする内容の案内だった。
>> ファーストカスタム破産 ・2015
※ 消費税率が10%になり、アベノミクス降下が続いたら寒いですね。
更に被害社がでるかもしれない...
おわりに...
拡大の展開と大陸製造のタイミングを逸したのか残念な結果になってしまった。
一オーナーとして最後までもの造りに拘り”made by 横手”で良いものを造り続けて
ほしかった。
業界で言えば2011年以降、架装ではなく仮装ばかり力をいれている?キャンピング
カーが多い中、異端児と言われた本質的な架装でド肝を抜くファーストカスタムと
いうビルダーが消えたのは残念でなりません...